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高松高等裁判所 昭和35年(く)5号 決定 1960年3月29日

少年 Y(昭一五・九・二七生)

主文

原決定を取消す。

本件を松山家庭裁判所に差戻す。

理由

本件抗告の趣意は記録に綴つてある少年の法定代理人Tの抗告申立書に記載のとおりであるからここにこれを引用する。

論旨は、保護者等が本人に意見したので本人も全く改心して現在○原建設に就職し真面目に働いている、然るに中等少年院に送致される旨の原決定があつたため本人も非常に悲観している、そのため折角改心しているのに却つて又悪くなるようなことになつてはと親として憂慮される。今後は保護者においても少年と起居を共にし責任をもつて監督し再び罪を犯させないようにする決心であるから寛大な処置を望むというのである。

よつて記録を調査するに、少年は既に昭和三〇年にも窃盗五回の非行を重ね松山家庭裁判所で保護処分に付された外、昭和三二年八月には東京家庭裁判所で窃盗罪により松山保護観察所の保護観察に付され、一且父に迎えられて松山市の親もとに帰つたが、半年程家に居た後再び働口を求めて家を出て各所を転々した末、金銭に窮し、更に本件二回に亘る犯行に出たものであること、並びに少年の知能は相当低く自己抑制力に欠けていることは認められるけれども、今回の非行により保護者等は少年に強く訓戒し、少年も非を深く後悔し、昭和三五年一月一七日より○原組に左官として就職し爾来日給六〇〇円を給されて真面目に働き、その得た収入も挙げてこれを父親に手渡して居ることが認められるので、家庭の監督よろしきを得るならば善良な社会人として立ち帰り得るものと思料せられる。而してこの点保護者においても厳重な監督を誓つて居るので、この際は今一度在宅保護の方法に委するのが相当であると見られる。

よつて少年法第三三条第二項により原決定を取消し本件を原裁判所に差戻すことにする。

(裁判長裁判官 三野盛一 裁判官 渡辺進 裁判官 荻田健治郎)

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